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子の返還手続きの流れ

海外で生活する夫婦の一方が、他方に承諾なく、子を日本に連れ帰った場合を想定し、子の返還手続きがどのように進められるのかについて説明します。

以下では、子を連れ去った親をTP=taking parentといい、子を連れ去られた親をLBP=leaving behind parentと表現します。

子が日本に連れ去られた場合、日本で返還裁判をすることになります。LBPが東京家庭裁判所か大阪家庭裁判所のどちらかに返還の申し立てをし、TPは相手方として審理の当事者になります。

子の返還裁判の特徴は、審理が非常に迅速に進められることです。裁判は時間がかかるものという印象があるかもしれませんが、子の返還訴訟は申し立てから、原則的として6週間以内に判断することを想定して進められます。通常の裁判が早くて半年、長い場合には数年かかることを考えると非常に短い期間で判断に至ります。

第1回の裁判期日は、申立てから2週間をめどに指定され、その後の進行に応じて期日が指定されます。裁判所は、期日間に当事者間での話し合いにより解決する調停も並行して進めます。

弁護士の関与の必要性

ハーグの返還裁判は、上記のとおり通常の裁判より迅速に進められるという特徴があります。

特に、TPの立場から見ると、訴訟対応のための時間が非常に短く、裁判所から連絡を受けてから対応可能な弁護士を探すことになるとさらに、準備の時間が短くなります。 TPは裁判の申し立てを知る前に、日本の中央当局(外務省)からの連絡でLBPが法的な手続きを検討していることを知ることができますので、中央当局から連絡を受けた時点で、弁護士に相談することをお勧めします。

裁判以外の解決について

子の返還については、子の返還訴訟+裁判内の調停という方法以外に、裁判外の紛争解決機関を利用して話し合いが行われることもあります。中央当局が裁判外の紛争解決機関を紹介してくれ、中央当局が委託する紛争解決機関1を利用する場合、利用手数料は中央当局が負担してくれます。裁判外の話し合いによる紛争解決は、裁判手続きよりも柔軟で、子を返還するか否かだけが判断される裁判手続きと異なり、それ以外の点についても当事者間で話し合い解決することが可能です。


1裁判外紛争解決手続き(ADR)機関の委託先リスト https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/ha/page22_001072.html