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調停に関するシンガポール条約
日本は、本年10月1日に、調停に関するシンガポール条約に加盟するための手続きをとりました。日本における本条約の効力発生日は2024年4月1日になります。

調停に関するシンガポール条約とは、調停による国際的な和解合意の執行等に関する国際的な枠組みを定める条約です[1]。この条約は、国際的な商事分野において国際調停の利用を促進し、調和のとれた国際経済活動を発展させることを目的としています。
日本がシンガポール条約を締結することによって、同条約と国内で定められる実施法の要件を満たした「調停による国際的な和解合意」に基づき、裁判外の調停であっても、国内で執行が認められることになります。

本条約に関する外務省の調停に関するシンガポール条約の概要説明資料によれば、執行手続きは以下のように説明されています[2]

  1. 当事者間で国際的な和解合意を作成する。
    各当事者が異なる国に営業所を有する場合。例えば、甲の事務所が日本、乙の事務所がA国にある場合等が対象。ただし、対象は商事紛争のみ(消費者紛争、家事紛争及び労働紛争対象外)。
  2. 当事者は国際的な和解合意の執行について権限機関(一般的には裁判所)に申し立て、権限機関が執行の可否を審査する。
    和解合意が無効である場合や公の秩序に反する場合には、権限機関は執行の拒否が可能。権限機関が認めるものについては、執行力が付与される。

国際的な商事紛争解決手段としての調停 ― まとめ
これまで国際的な調停合意には執行力がなく、当事者の任意の履行に委ねられていました。そのため、国際的な商事紛争の解決には仲裁が選択されてきました。
今後、日本で調停に関するシンガポール条約の効力が発生することで、調停による和解合意に執行力が付与されることになります。
これにより、国際的な取引や海外展開を行う企業は、より柔軟かつ低コストな紛争解決手段としての調停を選択することが可能になります。
新たに国際的な取引契約を締結する場合には、紛争解決条項に調停を定めることも十分に検討に値します。


[1] 調停に関するシンガポール条約(調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100476197.pdf

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100476198.pdf

[2] https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100476200.pdf