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中小企業や個人事業主の方、海外と取引をされている企業では、契約書を締結される際に紛争解決条項を定められていると思います。
例えば、Dispute Resolutionというような条項で、「当事者間の紛争はある仲裁機関の仲裁規則に基づき解決されるものとする」というような条項が定められることが通常です。

仲裁とは
仲裁とは、裁判による解決ではなく、紛争当事者が紛争解決を公正・独立な第三者(仲裁人)の判断に委ね、その判断(仲裁判断)に従うという合意に基づき紛争を解決する手段です。

国際取引で仲裁が選ばれる理由
まず、日本で、または相手方の国で裁判をする場合、原則的には公開で行われることになりますが、仲裁は非公開の手続きです。紛争に巻き込まれたこと自体を外部に知られたくない場合には、仲裁が望ましいと言えます(仲裁期間によっては別途秘密保持契約が必要な場合があり得ます)。

次に、仲裁では、当事者が判断を下す仲裁人を選任できます。仲裁機関の有する仲裁人リストから業界の専門知識を有する仲裁人を選任することができるメリットや、同じ国籍の仲裁人を選任することができるメリットがあります。

そして、仲裁判断は最終的な判断(一審制)ですので、第一審→控訴→上告という三段階の争いが可能な裁判手続き(三審制)と異なり、最終的な解決までの時間が比較的短いというメリットがあります。

さらに、仲裁判断には裁判所の判決のように執行力が認められます(ニューヨーク条約[1]に加盟している国同士の紛争の場合)。

このような理由から、国際取引では、契約書に紛争解決手段として仲裁による解決を定める契約書が多く見られます。 海外の相手方と契約を締結する場合には、契約書の紛争解決条項をよく確認し、仲裁地、仲裁機関、仲裁人の数など、取引相手、取引の種類、取引の規模などに応じて適切な紛争解決条項を定め、仮に紛争が起こったとしてもリスクを最小限にとどめるように手当てしておくことが必要です。


[1] ニューヨーク条約:正式名は1958 United Nations Convetion on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awardsで、日本も加盟国です。